平成23年現在、私達土地家屋調査士の報酬は、ほぼ極限まで下がっています。どの業界も
同じなのでしょうが、ここまで下がると事務所の経営も困難に陥るといったところまで下がって
います。2年に1度、業界内でアンケート調査を行い、全国の平均的な金額が出るのですが、
本当に限界値まできていそうな感じです。原因は当然不景気に起因するものでしょうが、それ
だけではないようにも思えます。新規で調査士事務所を開業した者にとってみれば、仕事を
取るためには当然顧客の獲得をしなければなりません。顧客として考えられるのは、不動産
関係者であり、ハウスメーカーであったり、銀行関係だったりするでしょう。新規に「開業しま
したので宜しくお願いします」なんて営業をかけても、当然名刺交換だけで終わってしまいます。
当然何か「お土産」となるセールスポイントを持たないといけませんので、結局「安く仕事を
させてもらいます」の構図が出来てしまいます。価格競争こそが、営業の一番の強味である事
くらい、誰だってわかってます。不動産関係者の世界なんて、広いようで狭いものです。あっと
いう間に噂が広がります。よく私も耳にするのですが、「どこどこの調査士はこの前表題登記を
○万円でやってくれたで。春名さんとこは高いん違うの?」なんてお言葉も頂戴します。表題
登記に限って言うと、普通の一般的住宅の全国平均はネットで調べてもわかるとおり8万円
くらいです。ウチも平均に合わせているのですが、一度4〜5万円の激安価格で受けてしまうと、
不動産業者は口が軽いので、その噂は一瞬で広まり、いつの間にか伝言ゲームとなって、
「○×事務所は表題登記をいつも4〜5万円でやってくれている」になってしまいます。
そんな噂が広まると、今後の自身の業務にも差し障る事間違いなしです(実は私自身も似た
ような経験があります)。自由競争なので4〜5万でも文句は言えないのですが、その金額から
必要経費や実費を差し引いた場合、全く経営が成り立たない事くらい、2〜3年業界でやって
きた人ならすぐにわかりますよね。表題登記で4〜5万というのは、そんな金額です。
もっと恐い事も多くなってきています。最近多くなってきているのは、業務の紹介料を公然と
要求してくる業者です。百歩譲って、平均額の8万円請求から1万円のバックマージンを要求
されるのであれば、エンドユーザーは被害を被らないので良しとしましょう。百歩譲ったとして
ですよ!ところが調査士には平均より高い10万円くらいの請求を出させ、そこから3割くらいの
3万円近くを要求する悪質な業者も出てきています。それも新米調査士が担当しているのでは
なく、ベテランの指導すべき立場の人が公然とやっているのですから更にタチが悪いです。
民間業者にはいくらワイロを送っても違法にはなりませんので、文句は言えないのですが、
エンドユーザーにしてみればいい迷惑ですよね。これらの事が日常茶飯事に行われている
調査士の現状を新人会員も知っているので、対抗するために更に価格の引き下げやバックの
上乗せで対抗していく。まさに悪循環です。
報酬基準の撤廃により予測されていた事ではありますが、今の業界は相当厳しい状況です。
民間を相手に頑張っている私としましては、本当に難しい状況になったものだと感じています。
以下、平成16年に記載した文章です。
土地家屋調査士の業務報酬につき、以前は「報酬規準額」というのが法律で規定されており、
その基準より高過ぎず安過ぎないよう指導されておりました。我々の業務は、不動産の円滑な
取引の一端を担う仕事なので、不当なダンピング等で一業者に業務が集中し、業務の正確性
が損なわれる危険性を危惧する意図があってのものでした。しかしながら、昨今の自由競争の
波に対し法律で基準を設けるのはおかしいのではという声も多く、平成15年に報酬規準は
撤廃されました。
基準が無くなったとは言え、業務内容が変化する訳でもありませんし、公正かつ正確な業務を
行う事に変わりはありません。基準が無くなった事により、報酬を高く設定する事務所もあれば
逆に安く設定する事務所も存在しているというのが実情です。金額差では、大都市中心部の
ほうが周辺地域より若干高く設定しているように感じられ、人を多く雇っている事務所ほど金額
が高めなのではないでしょうか。経営維持費や人件費を考えると当然なのかもしれません。
(あくまで私見ですので、抗議等御容赦ください) 全体的に見ると、不景気も手伝い、以前に
比べて安くなっているでしょう。
★よくあるトラブル
調査士に業務を依頼し、完了した後いざ請求が来ると、予想していた金額をはるかに上回って
いた!なんて事は良く聞く話です。我々の作業というのは、皆さんの目の届かない場所で地道
な作業が大変多く、土地の測量でも現地には3〜4回しか訪れてなくても、それ以外の場所で
多くの作業を行わなければならないのが実情なんです。そういった金銭トラブルを回避するため
にも、まず業務依頼する際にどのような作業が必要で、どれくらいの日数と費用がかかるのか
見積り等を上げて貰ったほうが懸命です。土地の測量の場合、予期せぬ出来事も多々あり
ますので、最終的に見積り金額を上回る事もあるかもしれませんが、一応の目安になります
ので、「後で驚いた!!」なんて事はなくなると思います。良心的な調査士さんなら丁寧に費用
の説明もしてくれるはずです。遠慮せず事前に聞いてみましょう。ただし、見積り金額と請求額
が相違したとしても、不測の事態による請求額の加減は許してあげてくださいね。
★ Q、それでも土地の測量って、費用が高いように感じるのですが・・・?
土地の測量といっても様々ですが、「測量」自体はそんなに複雑な作業では無いように感じる
方も多いのではないでしょうか。実際、現在の土地の状況(現況)を測量図面に熾すだけなら
1〜2回の測量と図面作成だけなので、日数的にもそんなにかかりません。しかし境界を確定
させるとなると話は別。境界の確定は隣接土地所有者との立会、道路管理者である官公庁
への申請・立会が必要であり、立会後も実印にて「筆界確認書」を取り交わさなければ後日の
トラブルともなりますし、法務局も境界が確定出来たものと判断してくれません。土地の登記
にはそれらの作業が必要となるため、期間も費用もかかるというわけです。
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