高度経済成長の時代、日本では家を建てればすぐに売れる風潮がありました。誰もが一国
一城の主を夢見て、俗に言う「うさぎ小屋」であっても手に入れる事自体を目標とする風潮が
あったからです。施工者にとってみれば、建てれば売れるのですから、少しでも多く建てて
売りたいに決まってます。当然の事ながら、家に対する品質よりも、建築スピードを重視しま
すので、構造に多少の難があったとしても外見上に現れて来なければ良しとしたかもしれま
せん。いわゆる欠陥住宅の量産です。家の形をしてさえいれば売れてしまった時代なのです
から、仕方ないのかもしれません。
昭和56年、建築基準法により建物の性能がUPしましたが、先の阪神大震災で倒壊した
家屋の大半がそれ以前に建築された木造家屋です。そして皆さんも御存知のバブル経済期
不動産の価格は急騰し、我も我もと不動産購入を望む時代が到来しました。誰もが一ヶ月
でも一週間でも早く建物の購入を望む風潮がありましたので、ここでも質よりもスピードを
重視した建築が優先され、結果として欠陥住宅の量産に繋がったと言われています。実際の
ところ、これらの時期に建てられた住宅は、基礎から浮き上がって役割を果たしていない柱や
断熱材の入っていない壁が解体業者により確認されています。もちろんそれらの時期に
建てた住宅だからと言って、全てが欠陥住宅に該当する訳ではありません。先の震災では、
施行時期が古くともきっちりと施行された建物は倒壊せずに現存しています。逆に比較的
新しい住宅であっても、施行の状況によっては倒壊した家屋も存在します。倒壊の原因が
施行によるものかどうかを立証するのは困難でしょうが、関係が無いとは言えないでしょう。
では現在の住宅はどうかと言うと、メーカーはこぞって質を重視した主張を行っています。
今建てる家は、どこのメーカーでも耐震性はもちろん、快適性も大幅にUPしているそうです。
「過去」のように品質をあまり考慮しない時代とは時代背景が違いますので、少なからず信頼
は出来そうです。ただし、その悪しき「過去」から既に住宅販売を行って来ているメーカーも
ありますし、いつの時代も「謳い文句」は付き物なので、全幅の信頼は置けないのではないで
しょうか。大切なのは確かな情報を得る事と、正確な知識を習得する事です。自分の身は
自分で守らなければならない時代です。安心して任せられる人(業者)を見付ける事こそ、
最大の自己防御に繋がります。
ただ一つだけ確実だと言える事があります。それは建物の建築費用が格段に安くなってきて
いるという事です。10年前と比べると、施行代金は格段に安くなっています。ここ数年でも
かなり値下がりしてきているのが現状でしょう。新参メーカーによる「高品質・低価格」住宅が
話題を呼び、これに伴い在来大手メーカーも値下げせざるを得ない状況が発生しているよう
です。細川護熙総理大臣の「住宅販売価格を値下げしろ」という呼びかけが影響したかどうか
は分かりません(笑)地価の下落と建物施行の安価。不動産を購入するなら今が最適な時期
かもしれません。日本には「安かろう、悪かろう」という言葉が存在します。安い家は品質も
悪く、高い家は丈夫で長持ちと考える方が今でもおられるのでは無いでしょうか。それは大きな
間違いです。安い住宅は、それなりにコストを削減する努力を行っているからこそ安いのです。
高い金額の家を自慢気に話す方もおられますが、単なるバブル期の風潮であって、今では
滑稽にさえ感じます。マクドナルドで一番安いハンバーガーの値段は、昔は210円でした。
それが今は70円です。「昔と比べてマズイ!」と思った事があるでしょうか?コンビニで売って
る150円のペットボトルが、スーパーなら95円です。価格差はあれど、どう見ても同じ商品
ですよね。そこに経営者の努力が存在するのであって、決して「安かろう、悪かろう」ではない
のです。しかしながら、百均ショップの商品を考えた時、「安かろう、悪かろう」が適用される
商品も存在します(特に工具類)。施行業者にも、「安かろう、悪かろう」業者が存在するのも
事実です。先に述べましたように、安心して任せられる人(業者)を見付ける事こそ、最大の
自己防御なのです。
他地域の現状がどうかは私には判りませんが、神戸近郊で考えると、相変わらず山林の宅地
開発が進み、ニュータウンとまでは行かないものの、大規模な宅地の造成が続いています。
市街中心部より離れているため閑静な場所が多く、広い土地で価格も安く、若い方には人気
のようです。開発業者は手を止めるとたちまち資金繰りが厳しくなるため、休まず開発を進め
ています。私見ですが、これから先は人口増加の望めない少子高齢化時代が到来します。
その高齢者の多くは、高度経済成長期やバブル期に自所有不動産をお持ちになっている事
でしょう。子供達が郊外に住まいを構えてしまうと、親が亡くなった時、親の不動産が宙に
浮きます。「他人に貸せばいい」なんて安易に考えていませんか?今は新築物件でさえも
借り手の付かない物件があるのに、親の不動産を借りてくれる方がいるでしょうか?加えて、
2050年には石油が稀少な資源となり、ガソリンは我々一般庶民には手に入りにくい商品に
なると言われています(恐らく代わりのエネルギーが開発されているでしょうが・・・)バスに乗ら
ないと帰れないような郊外では、バスの運賃が相当値上がりしているかもしれませんし、バス
自体が廃止されている可能性もあります。マイカー通勤なんて出来るハズありません。
そうなると、交通の便の良い所への転居が必要となってきます。親の不動産が良い場所なら
そちらに転居し、購入した郊外地は売りに出す事となるでしょう。みんなが同じ行動を取った
場合、郊外地の地価は下落し、下落しても誰も購入してくれないゴーストタウン状況が発生
するかもしれません。あまりにも離れた郊外地の購入はどうかと私は考えます。何の根拠も
無い空想ですけどね(笑)
注:上記文章は「田舎」の事を言ってるわけではありません。
都心部を取り巻くドーナツ部分の事ですのであしからず・・・
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