相続に関する兄弟間トラブルというのは意外と多いものです。その原因の多くは、「女性」って
事を御存知ですか?相続人が故人の妻と息子2人娘2人だったとします(このパターンが一番
紛争が起き易い!)女性はしっかりしてますので、例え相手が母であれ娘であれ姉妹であれ、
しっかりと自己主張をします。男の人は案外無頓着で相続トラブルの原因とはならないのです
が、その嫁さんがダンナのケツを叩いたり、話に参加し始めたりすると、これまた話がこじれ、
泥沼化する事も多々。当事務所においても、毎年3〜4件程度の相続に関与する業務の依頼
を受けますが、そのうちの1件は必ず問題が発生しております。当事務所の力及ばなかった
例も有りますが、解決した例を参考に事例を紹介します。皆さんの紛争解決の一助となれば
幸いです。
まず、争点となっている事が何かを明確にさせて下さい。「不動産の処分方法について問題
が発生している」とか「金銭の分配比率でもめている」とか、何が原因かをはっきりさせて
下さい。民法では「法定相続分」というのが定められており、「誰が何分の何を相続」と明言
されています。紛争の大抵の原因は、法定相続分では足りないと主張される方がおられる
所から始まります。「お前が子供の時兄ちゃんが働いて食わした」だとか、「お前は結婚資金
を全てオヤジに出して貰った」、「お前は大学までの学費を出して貰った」とか、「お前は親の
面倒を全然見ていない」などなど、他の相続人と比べて自分は今までに受け取った恩恵が
少ない事を主張する事から始まります。こうなってしまってはお互い意地の張り合いで、相手
にちょっとでも譲る事自体が許せなくなってしまいます。そうなると、もう泥沼ですので我々でも
手が出ません。ここまで話が進んでしまった方は、家庭裁判所での話し合いをお勧めします。
家事事件の審判は、皆さんが考えているよりずっと受け易いものですので、どうしても自分達
だけでは解決不可能な場合の一つの手段として利用してください。
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家事事件のしおり(家事審判・家事調停の利用について)
記載した方法を利用し、相続財産を複数個の不動産とする事で解決しないでしょうか?土地
や建物は、分割して相続する事が可能です。特に土地の場合は、分筆する事が解決策と
なる事が多々あります。しかし、気を付けなければならないのは、分筆(建物の場合は区分)
により発生した不動産の評価が、分筆(区分)前と異なる点です。共同住宅やマンションの
場合は、当然上階の方が売買の時に高い値が付きます。土地の場合は、同じ面積であっても
公道に面した土地で正方形に近い土地の方が、そうでない土地より高く評価されます。
公道に面する状況によっても価値が変わってくるのです(下図参照)。これらを総合的に考え、
分筆或いは区分すれば、紛争解決の糸口とはならないでしょうか?
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Aという相続土地をA−1、A−2に分筆した場合、A−1は正方形に近く、
公道に直接面しているのに対し、A−2は私道を通らないと公道に面しない上、
長方形に近くなります。この場合、両土地が同じ面積だと仮定すると、A−1の
土地の方がA−2の土地より価格が高く評価されます。A土地を2筆に分筆して
二人で相続する場合には、A−1よりA−2の面積を多くし、同等の評価となる
よう分筆するのが良いでしょう。 |
分筆するには小さい土地や、区分出来ない一戸建ての相続で問題となっている場合は、残念
ながら売却して金銭化し、相続人で分配しなければなりません。どうしても現状のまま誰かが
住み続けたい場合は共有持分で相続登記を行うのがベストですが、後々のトラブルを防止
するため、住み続ける方は共有者に賃料を支払わなければならないのか、無償で住み続けて
いいのか、最終的に処分(金銭化)する場合は持分の比率で金銭を分配して良いのか等を
細かく決めておいた方が良いでしょう。後になって問題が発生しないよう、分割協議書に一筆
記載しておくのも手です。今現在、面倒な事はイヤだから簡単に共有で相続を行ったとしても、
後々に共有不動産の処分方法でトラブルが発生する可能性も有りますし、故人名義のまま
放置していたら、その子の世代はいいですが、孫の世代で紛争になるかもしれません。
トラブルが発生し、解決が困難な場合はどうしても放置しがちですが、いずれ解決しなければ
ならない問題ですので、早めに手を打ちましょう。
司法書士さんや、我々土地家屋調査士、税理士さん等を話の中に入れて、第三者の意見を
聞きながら話を進めるのもいいかもしれません。それぞれの士業の方々は、相続トラブルの
仲裁の専門家ではありませんが、自分の職務を遂行する上で色々なケースに当たって来てる
はずです。弁護士さんは費用も高くつきますし、いざ「登記」となった時点で、どうせ司法書士
や土地家屋調査士の門を叩かなければならないのですから、最初から相談を持ちかけた方が
費用的にも手間的にも少なくて済みます。法律的な観点からのアドバイスも可能ですので、
相談してみるのも良いでしょう。
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