不動産の購入は当然の事ながら金額も高く、何度も買い換える訳にもいきません。
十分に納得出来る物件を時間をかけて見付けるのが良いでしょう(当たり前の事です)
不動産屋のアドバイスは「早く売りたい!」といった感情が入っていますので、マイナスポイント
は教えてくれない場合も多いです。業務上、色々な土地を見て来た土地家屋調査士の観点
から、不動産購入のポイントをいくつか記載してみます。
まずは在り来りですが、購入にあたり考慮すべき項目を考えます。考えられる項目は、
・駅に近い ・敷地が広い ・予算が○万円以内 ・小中学校が近い
・通勤時間○分以内 ・スーパーマーケットが近い ・二世帯住宅
・実家が近い ・公園や緑の多い場所
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などなど、色々考えられます。どんな事でもいいので希望する事を自由に発想してみて下さい。
その後、それらを優先順に並べ替えてみましょう。絶対に譲れない項目と、多少は譲れる
項目が出てくると思います。これらの順位は皆さんのライフスタイルで決まりますので、誰しも
同じ結果とはなりません。御主人の仕事を優先的に考えるのなら駅に近く、通勤時間の短い
場所が上位となりますし、子供の環境を優先的に考えるのなら繁華街よりも緑の多い住宅街
を優先すべきでしょう。みんなで話し合って順位を決めてみましょう。
例
@ ・予算が○万円以内
A ・通勤時間が○分以内
B ・駅に近い
C ・敷地が広い
D ・公園や緑の多い場所
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上記は優先例に順位を付けてみたのですが、イイ条件の物件は金額も高く、なかなか見付
からないのは当然です。1億円の豪邸を考えているなら話は別ですが、我々庶民の場合は
結局のところ、どこまで妥協出来るかが勝負です。「Aを優先すればCが無理」なんてのは
当たり前です。だからこそ優先順位を付けておくのです。
以上が決まったら、物件を探してみましょう。限られた時間で多くの物件にあたるのは難しい
ですが、出来るだけ多く見た方が良いです。数多く見ていると、最初に見て「これはイイ!!」
と思った物件が「そうでもないな〜」なんて思うようになっているものです。不動産屋が「早く
決めないと他のお客様も商談中の物件ですので・・」なんて急かす言葉をよく言いますが、
本当は商談中の客なんていません(笑)。「いくつも物件を見ていると迷うだけですよ」も大きな
間違いです。いくつも見るからこそ今まで分からなかった部分も見えてくるものです。不動産
屋の言葉に惑わされず、しっかりと見定めて下さい。では調査士の観点からのアドバイスを
いくつかします。
@境界が確定していない物件
取り引きには実測面積での売買と、公簿面積での売買が有ります。実測面積とは、隣接地
との境界立会が完了しており、境界が確定している場合を言います。現況に基づいて計測
しただけの場合は実測面積とは言いません。立会が完了していればベストですが、立会して
いなければ図面に効力はありませんので注意が必要です。法務局に登記図面が存在して
いれば基本的に測量の必要は有りませんが、昭和40年代の図面の場合は現地と図面とが
相違している可能性もあります(測量精度があまり高く無い時代ですので)。最近の取り引き
の主流は隣地との境界立会まで完了し、登記面積と相違するようであれば地積更正登記を
行った上で取り引きする方法が多く用いられています。しかしながら公簿面積のままで取り引
きする場合も往々に存在しているのも現状です。公簿面積のまま取り引きの場合は、実測
すると面積が極端に減る場合もありますので注意が必要です(逆に増えてラッキーな場合も
有りますが・・)売買の際には、可能な限り実測面積での売買にする方が良いでしょう。
A接面道路が4mを切る物件(セットバックが必要な物件)
土地上に建物を建築する場合には、建築基準法に従って建てなければいけません。建築基準
法では、建物の前面道路の幅員は4m確保しなければならないと決められています。つまり、
購入しようとする土地が100uで青の境界点であったとしても、建物を建てる場合には道路
中心線から2mの赤の点まで下がった上で建物の建築を行わなければいけません。(図1)
図1
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当然、利用できる敷地面積が減るので建ペイ率・容積率共に減少し、建築可能な大きさは
小さくなります。また、中古の家をリフォームして売り出す物件は特に注意が必要です。前面
道路が里道で幅員も定かでない中古物件で、重要事項説明書には「前面道路は里道で幅員
不明につき建て替えの際には協議が必要です」と記載があったとします。リフォームの場合、
新たに建築許可を要しませんので前面道路が狭くとも問題になりません。逆に言えば、新築
するにはセットバック範囲がかなり広いため小さな家しか建たないので、リフォームして売りに
出た物件であると解釈出来ます。(図2)
図2
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この中古物件を購入する場合、将来的に建て替えの際は3mくらい下がらなければならない
可能性も有るという事を理解しておかなければいけません。このような多少難有り物件の
場合、通常より安い金額設定がされています。周辺に比べて安い金額で売りに出ている場合
は、安い理由をしっかりと見極めるようにしましょう。
B共有の私道を利用している物件
大きな宅地をいくつかに分筆して分譲している場合、私道を利用して公道に出る場合があり
ます。このような所有形態は大変オーソドックスで、全く問題有りません。しかし図3と図4と
では同じ私道でも所有形態が異なっており、意味合いも異なります。専ら私道の場合で問題
となるのは私道の路面補修の際の費用負担です。図3の場合、C・Fは公道に面していますが
私道の持分も取得しています。普段は私道部分を使用していませんが、補修費用は負担
すべきなのでしょうか?図4の場合、私道北側部分(A・B所有部分)が損壊した場合、C・Dは
補修費用を負担する必要は無いでしょうか?法律的な解釈を適用する場合、両問題共に結論
は出てくるかもしれませんが、毎日顔を合わせるお隣さん同士で費用の問題が発生するのは
イヤなものです。私道負担のある土地を購入する際には、購入の段階において予想される
問題をクリアにしておいてもらう方が良いでしょう。
図3
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図4
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