長い期間、土地家屋調査士法により守られてきた「報酬規準」。政府の規制緩和推進計画に
よると、報酬の基準を設けるのは自由競争の理念に反し、国民に不利益をもたらすとの事です。
(私の間違った解釈かもしれませんが・・・)
確かに自由競争が過熱すれば、価格はどんどん下がり、価格が下がれば消費者にとっては
嬉しい限りです。牛丼やハンバーガーの価格も昔では考えられないくらいに下がってますよね。
(逆を言えば、昔はどれだけ利益を取っていたのかと考えられますが)価格が下がる一方で、
提供する側にしてみれば当然の事ながら利益が減るわけですから、その穴埋めに何等かの
手段を講じなければなりません。それについては政府は各自で考えてくださいとの事です。
小売り業なら仕入れを安く抑える等の方法がありますが、我々調査士には難題です。政府に
とって、我々のような零細企業者はどうでもいいんでしょうね。しかしながら、そういう時代に
突入した以上は、何等かの手段を講じなければなりません。自由競争の荒波を経験した事の
無い土地家屋調査士業界の人々にとって、どこまで価格を下げれば良いのかわからず、価格
競争も過熱化しそうな雰囲気の昨今です。
競争なのか時代の流れなのか、ここ数年業務に対する報酬は下降する傾向にあります。
もちろん自由競争ですので、価格を下げるばかりでなく上げる事も可能です。兵庫県のデータを
見てみると、普通の住宅の新築登記(建物表示登記)で1件19万円という請求例も存在して
おります。全体的に見ると、建物表示登記の場合9万円前後の価格設定が多く、場所的な差異
では、過疎部は安く、都心部は高い傾向にあります。
自由競争で業務獲得のため価格は下げたものの、経営維持が困難になった事例もあります。
土地家屋調査士業は物品小売り店のように薄利多売が出来る業種ではありませんので、
薄利分は自分達のアイデア(経営努力)でカバーしなければなりません。大多数の事務所は
人件費の削減に目を向けており、補助者の給与レベルは軒並み低いのが現状です。長年
務めている給与の高い人材を解雇し、若くて賃金の安い人材を雇用しなおすというなんとも
悲しい手段を講じた事務所もあります。事実、私の友人は半強制的に解雇させられて若い人材
と入れ替えられ、途方に暮れておりました。経営者を批判したくもなりますが、ここまでしないと
事務所が存続出来ないのですから致し方無いのかもしれません。
価格競争に話を戻しますと、土地家屋調査士業の場合、仕入れ金額というものがありません
ので、基本的に「手間」に対する報酬です(コンクリート杭購入やセメント購入等の雑費は多々
ありますが、金額にするとそれほど高くはありません)。その「手間」に対する「報酬」を各自で
設定するわけですが、「手間」について誤解されている方も多くおられます。調査士の報酬は
単に「手間賃」というだけではありません。調査士は納品する書面には職印を押印しますが、
一旦職印を押印した書面は、一生涯保障しなければならないのです。その責任ある行為を
単に時給計算だけで費用が高いとか安いとか言うのはどうでしょうか。そのような「バーゲン
ハンター」さんは、安い事務所を探せば必ず何処かにありますので、探してみて下さい。
業務を獲得するために異常なくらい安く請け負う業者も出てきました。これには2通りあります
赤字であっても業務を受ける事で業務発注者の企業に入り込み、徐々に費用を上げて行こうと
考えている方です。要は激安価格を企業に入り込むための手段に使うわけです。もう一つは、
仕事が無く、社員を遊ばせているくらいなら赤字であっても仕事を受けて少しでも報酬を得よう
という流れです。大人数を雇っている企業(事務所)ではよく耳にします。いずれにせよ、赤字を
出すという事はそれなりに経費を節減した業務提供になりますので、成果品の質の低下にも
繋がりますし、今後、継続的に安定したサービスを提供出来ない可能性も考えられます。
優良な企業は適切な報酬を得る事で、安定したサービスを継続的に提供出来る態勢を作り
ます。この点で前記2例は危ないかもしれません。
価格競争とはちょっと違いますが、汚い(許せない)方法で業務を獲得している方もいます。
土地家屋調査士ではなく司法書士なのですが、女の武器である「色」仕掛けで業務獲得を行う
という極めて稀な方です。先生が若くて綺麗な方らしく、ついでにお色気ムンムンの超ド派手な
服装で営業をしておられるそうです。おまけにその方の事務所の補助者は全て20代前半の
女性で、制服ではないのですが服装は全員派手な原色使用、ミニスカート着用が義務付け?
られているらしいです。業務を発注する側はある程度の年齢の方なので、「イチコロ」と言った
ところでしょうか。これはちょっとやり過ぎですよね。(この情報については聞き及びですので
兵庫県司法書士会をはじめとする皆様からの問い合わせはお断り致します。既に周知の事実
となっているでしょうが・・・)いつか問題に取り上げられますよ、きっと。
今後、我々土地家屋調査士が考えて行くべき課題は、依頼者のために費用を抑える事は
もちろんの事、費用以外のサービスも充実させていく事ではないでしょうか。例えば、土地の
合筆登記の場合、合筆登記済証が権利証となります。権利証なのですから、大切に保管出来る
状態にして納品するとか(大抵の事務所はやってますが、一部事務所は済証の紙そのままで
封筒に入れてました)、境界の写真を年月が経っても確認出来るよう写真+CDで納品するとか、
アイデアひとつで色々なサービスが出来ます。それらの事をしっかりと考えてこそ、消費者の
立場に立ったサービスと言えるのではないでしょうか。残念ながら、現在の土地家屋調査士は
価格ばかりに目を向け過ぎのようです。市場を考えた場合、価格競争力の行使が何よりも
強いのは当たり前の事なので、仕方ないのですけどね。
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