前述のとおり、土地家屋調査士の現在の状況は非常に厳しいものです。弱肉強食という言葉が
ありますが、現在の世相はまさにこの言葉が象徴するとおりの状況です。個人務所なんて、
ちょっと気を緩めるとあっという間に企業に淘汰されてしまいます。それは我々の業界だけに
限らず、全業種において共通して言える事でしょう。
土地家屋調査士制度が制定された当初、世間では「それってアヤシイ?」程度でしか見られて
なかったそうです(所長談)土地家屋調査士は、諸先輩方の長年の努力の成果として、単一
専門業種としての地位取得、報酬価格の引き上げを実現して参りました。そんな努力の成果が
一部の土地家屋調査士によって崩壊されようとしているのが現在です。極端な価格の引き下げ
は、結局自分達の首を絞める事にも成りかねません。価格の引き下げは、慎重に行うべきでは
ないでしょうか。
だからと言って引き下げが悪いとは決して言えません。同業者の方なら理解出来るでしょうが、
手間の割に報酬が高めの設定が通例化されている業務があると思います。その最も代表的な
事例がマンションの表示登記です。現在のマンションは、100戸の建物が全て形状が異なる
100通りである事は極めて異例です。大抵は同一形状の建物がいくつかありますので、図面の
作成もそんなに手間がかからないはずです(もちろんかなりの時間は要しますが)。逆に、測量
の場合は個々によって事案がかなり複雑になるケースも多いです。同じ100万円の仕事を
する場合、手間が少ない方がいいに決まってますので、今の世の中はマンション表示登記の
取り合い合戦の戦場と化しています。そういった手間の程度が低い業務は進んで価格を下げて
いくべきだと思います。調査士の側からすれば、基本的に業務の手間に対する報酬という見方
で考えていけば極端な価格引き下げは起こらないのではないでしょうか。
もう一つ大切な事があります。我々土地家屋調査士は、適切な知識を有していると国が判断し
資格を与えて貰った「士業」です。調査士が書類を提出する際には「土地家屋調査士何某」と
明記し職印を押印しますが、それは調査士としての証明、言い変えれば調査士の証明価値
が発生した書面となる訳です。証明するという事は、逆に問題が発生した時の責任も負うと
いう事ですので、間違った証明や虚偽の証明は出来ません。そういった責任行為の対価が
報酬となりますので、報酬の計算は単に手間賃だけで計算すべきではありません。先にも述べ
ましたが、調査士の報酬引き上げには諸先輩方の長年の努力があっての事ですので、その
努力を簡単に踏みにじるような行為は避けるべきです。調査士としての責任の重さを十分に
考えた上での価格設定が必要でしょう。
|