土地家屋調査士に測量を依頼する必要が生じるケースとしては、いくつかのパターンが考え
られます。
@ 建物を建築する際、建築士より測量する必要があると言われた場合。
A 土地を売却する際に、不動産屋より測量が必要と言われた場合。
B お隣さんより境界が不明なので明確にしたいと言われた場合。
C 土地の一部をお隣さん等の他人に譲渡する場合(分筆)。
以上が代表的なケースです。@の場合、建築用に使用する図面ですので、隣地との境界を
明確にするものではありませんので事前準備は必要有りません。A以降の境界の確定が
必要なケースで、過去に測量した事が無い土地を想定して話を進めていきます。よくある質問
ですが、仮に昭和40年代に測量して法務局に測量図が存在していたとしても、その
測量図に記載された数値と現在の測量成果が一致する事はまずありません。この点に
つき、よく「以前の測量が間違っている」と言われる方がいらっしゃいますが、決して間違って
いるのではなく、現在の測量精度と当時の精度とが異なるからであって、技術面の差異が
大半を占めています。加えて、当時の法制度(不動産登記法)と現在の法制度も異なって
いますので、語弊がありますが昭和40年代は「私の土地はこれだけ」と勝手に測量して登記
する事も不可能ではなかった訳です。今現在は隣接地全ての方と指定の方法で境界確認を
行わなければいけません。時代の流れと共に、技術・法制度も変わってきてますので、残念
ながら皆さんが以前に測量していた土地であっても、現在の基準ではその数値を採用出来
ない場合があります。この点は理解しておいて下さい。だからと言って、当時の測量が無効
となるる訳ではありませんので、注意して下さい。
年代
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調査士の使用機器・技術
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法務局への立会の証明
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昭和30年代 |
平板測量
(巻尺使用)
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不明
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昭和46年まで |
平板測量・トランシット
(巻尺使用)
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「隣地承諾書」の様式が定められて
いたものの、交換方式ではないので
隣地所有者は何も持ってない状態 |
昭和62年まで |
平板測量・トランシット
(光波測距儀発明も、高価で
大半の調査士が巻尺使用) |
筆界確認書・立会証明書添付必要
ただし、認印押印が大半を占める。
交換方式ではないので隣地所有者
は何も持ってない状態 |
昭和62年以降 |
ほぼトータルステーション
(光波測距儀で現在も使用
されている機械。 |
筆界確認書が2通作成の交換方式
となり、隣地所有者に1通渡される
こととなった。立会証明書もまだ存在
しており、どちらでも良い。 |
平成11年以降 |
GPSが測量に導入されるが
高価なので調査士の大半は
トータルステーション使用 |
立会証明書の廃止、筆界確認書へ
の一本化。 |
平成20年以降 |
GPSも利用、世界統一基準
の座標値による図面作成が
原則化される。 |
筆界確認書
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筆界確認書とは?
境界を立会して確認した事実を後世に伝えるための書面で、お互いが実印で押印
し合い、相手の印鑑証明書と共に保管する仕組み。所有者に世代交代があった
場合でも、誰がいつ立ち会ったのかを双方がどちらからでも証明出来る仕組み。
前置きがかなり長くなってしまいましたが、測量事前準備としてまず最初に必要になる事は、
どこのどの土地家屋調査士に依頼するかです。同じ資格を持つ調査士ではあるものの、
業務の行い方には人それぞれでかなり違いが生じ、費用面でも大きく異なるのが現状です。
物品販売のように「定価」が決まっていて「販売価格」が異なっているのとは全く異質のもの
です。全く任せっきりで業務を行ってくれる調査士さんもいれば、要所要所のみ依頼者に
任せる調査士もいます。そうかと思えば、押印取得まで依頼者に任せる調査士もいます
(その分費用を減額してるのでしょうが・・)。成果品ひとつにしても封筒にざっくばらんに入れ
てる調査士もいれば、綺麗にファイリングして見易い納品形態を取る方もおられます。全て
に手間をかけている調査士さんが当然良いのですが、その手間分の費用がバカ高なら、
それはそれで考えものです。大抵の場合、面倒なので不動産屋等の紹介に任せる事が多い
ですが、一度は会ってみて見積り・業務形態等諸々を訪ねてみたほうが良いでしょう。
依頼する土地家屋調査士が決まれば、まずは境界に関する資料提示です。法務局で取得
出来る書面(登記簿・公図・測量図等)については、基本的に調査士さんが調査しますので、
皆さんが持っている土地に関する古い図面等を用意してあげて下さい。図面の他に考えられ
るのが昔の写真も境界を証明する根拠になります。それらの書面や写真は公的機関には
存在しないものですので、言われてから探すのではなく、事前に探しておいたほうが良いで
しょう。必ず役に立つわけではありませんが、参考資料として役立つと思います。
境界を示した古い図面です。現在と数値の一致はありませんが、
当時の境界の状況はしっかり確認出来ます。ちなみに単位は「メートル」ではなく「間」です。
見方がよくわからない図面であっても、調査士にとっては参考になります。
昔の境界の状況の写真です。境界がはっきりしない写真であっても、
どの部分までをどちらの宅地がしようしていたか等、参考になる部分があります。
よく間違えるのが、建物を建築する際の設計図です。この図面は建物建築の際に予測される
境界を示しただけですので、土地境界を主張する根拠図面には全くなりません。
当時の現況を把握するという意味では使えますが、記載の寸法を主張する事は出来ません。
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