現在の新築マンションは、一戸建て注文建築では手が届かないような設備も充実しており、
住まいの検討の第一位となっています。その人気の理由は、まず第一に安全性でしょう。
玄関のオートロックにより不審者の侵入が困難であり、来客者をモニターで確認出来ます。
防犯・火災・地震対策も施されており、安全性を考えるなら戸建てよりマンションが優位です。
設備面でもキッチン・バス・トイレはもちろん、床暖房・浴室乾燥等が標準装備となっている
マンションが多く、不在時でも宅急便が受けられるシステムも存在します。これら全てを戸建て
で満たすにはかなりの費用がかかります。ゆえに、マンションの需給は年々増加する傾向に
あります。しかし、これらの表面上の設備だけでマンションを選んで良いのでしょうか?
購入検討の場合には以下の項目も考慮に入れるべきではないでしょうか。
@構造上の問題点は無いか。
大抵のマンションは、骨となる鉄骨や鉄筋にコンクリートを流し込む鉄筋コンクリート(鉄骨鉄
筋コンクリート)造が主流です。強度面では木造に比べて頑丈であり、耐久性・耐火性に優れ
ており申し分ありません(結露し易いという難点はありますが・・・)。その鉄筋コンクリート造
ですが、最近、構造上の欠陥が指摘されています。テレビを見られて御存知の方も多いと思
いますが、流し込んでいるハズのコンクリートに大きな空洞が出来ており、鉄筋が剥き出しに
なっている箇所が発見され、裁判になっている例があります。それも、有名な大手メーカーの
マンションです。メーカーは「強度には支障が無い」と言っていますが、支障が無いかどうかを
調べる方法も有りませんので実際のところはわかりません。地震がくれば、その部分が原因
で傾く可能性だってあります。こういった欠陥箇所を購入者が事前に見抜く事は、残念ながら
不可能です。施行者を信頼して購入せざるを得ません。「強度」についても、「免震構造」とか
「耐震構造」とか色々な言葉を聞きますが、先記のような手抜き工事が行われていれば意味
がありません。第一、免震にしても耐震にしても、机上計算での免震・耐震に過ぎません。
実際の地震の揺れは、机上理論を遥かに上回る事だって有り得ます。低周期での長時間の
揺れに対しては想定されていないケースも多く、耐震構造については付加価値程度に考えて
おいたほうがいいかもしれません(当然無いよりはマシですが)。耐震構造でないマンション
であっても、しっかりとした構造で確実な建築の施された建物は頑丈なものです。先の阪神
大震災で、あるメーカーのマンションはことごとく倒壊しました。同時期の建築で同規模のマン
ションであっても、一棟も倒壊しなかった大手メーカーも存在します(宣伝も兼ねて書きますと
三井不動産のマンションは倒壊数ゼロでした!)。その差は、構造上の問題と手抜き工事で
ある事が後の調査により判明しています。(記載文の聞き慣れない文言はネット上で検索
してみて下さい。色々発見出来ますよ!)構造上の問題でもう一つ上げられるのが壁厚です。
壁の厚さの事ですが、マンションは上下左右を他の区分所有者が住んでいる訳ですから、
当然の事ながら「音」の問題も発生してきます。これまた各メーカーにより色々な防音処理が
施されていますが、壁圧が薄いと音の伝導が大きくなるのは当然です。壁の厚さなんて考えた
事が無い方も多いと思いますが、マンション選びの際には設計図を見て他社と比べて見て
下さい(壁厚が厚いとコンクリートの必要量が多くなるので、メーカー側は出来るだけ薄い壁
にした方が室内も広く使え、経費も抑えられます)
A敷地の問題点は無いか。
マンション建築に際して現在の主流は、土地の境界を確定した上で建築する場合がほとんど
です。しかし、中古マンションの場合は境界が定かでない状態で建築している例も多く見受け
られます。このような場合、隣接地とのトラブルが発生する可能性も出てきます。マンションを
将来建て替える際に、境界の問題が出てくるかもしれません。購入の際には境界が確定され
ているかどうかも調べておいた方が良いかもしれません。
境界とは別に、建蔽率(けんぺいりつ)・容積率も着目すべき点です。建蔽率とは、行政が
「この地区は敷地面積に対して何%の割合までの建物を建築しても良い」と定めたものです。
(建蔽率の計算は建物を上から見た建築面積で計算しますので、大抵は1階部分の構造での
計算ですが、屋根のみを有するエントランスや、屋外の屋根付き駐車場等も建築面積に算入
します)容積率も同じで、敷地面積に対して何%までの割合の建物なら建築しても良いと定め
たものです(容積率は10階建なら10階分全ての床面積を計算して算出します)。例えば、
建蔽率80%容積率400%の土地上にマンションが建築されたとします。A不動産は、その
土地上に建蔽率・容積率共にギリギリまで使って100u100戸10階建のマンションを売り
出しました。B不動産は、同じ土地上に建蔽率70%・容積率300%のマンション100u75戸
8階建を建築して売り出しました。どちらが購入者にとっては得なのでしょうか?立地条件・
広さ・設備・金額等、考える要素がたくさん有るので一概には比較出来ませんが、もし将来的
に建て替える時期が来た場合、建蔽率・容積率共にギリギリまで使っているA不動産マンショ
ンの場合、新しい建物100戸全部の専有面積を従前と同様に100u確保する場合、やはり
100戸までしか再建出来ません。B不動産の場合、建蔽率・容積率共にゆとりが有ります
ので、100u100戸10階建のマンションを再建する事が可能ですので、元々住んでいた
人達以外にも25戸分新規に販売する事が可能です。その利益を建築費用に充当する事も
可能ですよね。よってB不動産のマンションの方がお得だという計算になります。中古マンショ
ンの購入を検討されている方で、そのマンションが震災の影響を受けているようでしたら、
この点には是非着目すべきです。中古でなく新築マンションであっても、不動産会社によって
この点はバラつきが有りますので、是非検討材料にしてみて下さい。建蔽率・容積率は行政
が決めるものであり、昔と今とでは数値に変化のある地区も多数存在しています。阪神大震
災では、建蔽容積が問題となり、再建出来なかったマンションも多数存在します。逆に、建蔽
容積にゆとりを持たせていたマンションの再建は、新規販売を伴う事でスムーズにいった例も
有ります。建蔽率・容積率は、是非着目すべき点ではないでしょうか。
B近隣住民の話を聞く
震災の被災地でない限りは必要の無い項目ですが、現在、当事務所の入居する賃貸マン
ションは先の阪神大震災により1階部分の柱が一部毀損し、鉄筋が剥き出しで完全に曲がっ
たという経緯があります。その時は若干ですがマンション全体が傾いていました。今は復旧
工事により、外見上は全く分かりません。もしこのマンションが中古分譲マンションだった場合
購入するでしょうか?柱が毀損した事など、現在では外見上の判断が出来ませんので、知ら
ないまま購入される方もいると思います。被災地区の中古マンションを購入される方は、震災
の被害が無かったか、近所の商店の方にでも聞いた方が無難かもしれませんね。
{余談}
当事務所は震災まで近所の別のビルに有りましたが、震災によりビルが倒壊。継続中の仕事
が多かったので、近所ですぐに入居出来るビルを探したところ、現在のマンションが見付かっ
たので移転しました。元々いたビルの再建までの間のつもりで入居したのですが、そのまま
居着いております。事務所なのに、キッチンや風呂も完備されていてヘンな感じです・・・。
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