相続と分筆で記載したように、土地は故人名義の土地であっても故人名義のまま分筆し、
相続する事が可能です。では建物の場合はどうでしょうか?相続人同士での共有名義で
なく、相続人各自の単独所有建物とするにはどうすれば良いのでしょうか。
例題
4世帯が入居出来る共同住宅を所有していたAが亡くなったと仮定します。Aには妻Bと
子供C・Dがおりましたので、相続人はB・C・Dの3人です。相続財産はこの建物のみで現金等
は一切ありません。それぞれの法定相続分は妻B1/2、子C1/4、子D1/4です。
妻Bは、自分自身と自分の親を共同住宅に住まわせたいと希望しています。子Cは共同住宅
を売却して金銭化したいと考えています。子Dは他人に賃貸し、家賃収入を得たいと考えて
います。それぞれの考えがバラバラなので、共同住宅をどのように相続すれば良いのか、
なかなかまとまりません。どうすれば良いのでしょうか?
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このような場合、現在の登記は「1戸」の建物となっていますが、一定の要件(出入り口が
各住戸にある等)が満たされていれば、各住戸単位で「1戸」の建物とみなす登記に変更する
事が出来ます。これを「建物区分登記」と言います。故人が残してくれた建物は「1戸」の
不動産だったので、3名の相続人が共同で相続した場合、処分の方法に困ってしまいますが、
「建物区分登記」を行う事で、故人は「3戸」又は「4戸」の不動産を残してくれた事になります。
B・C・Dが共同で申請する事により、故人名義のままでの建物区分登記が可能となるのです。
区分した後に、それぞれ単独所有にて相続すれば、1戸を売却する事も可能ですし、自分
名義のまま住み続ける事も、賃貸する事も可能となります。これなら問題は発生しませんね。
共同住宅はもちろん、マンションや二世帯住宅でも概念は同じですので、「建物区分登記」を
理解していれば、相続人間で問題が発生する事なく相続出来る場合があります。
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(建物区↓分登記)
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(建物区↓分登記)
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(相↓続)
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(相↓続)
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(4戸の住戸を3個の不動産に区分、4個の不動産に区分は各自の自由意思)
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注意点
「建物区分登記」を適用するには、一定要件が必要となります。大前提は、区分しようとする
各住戸に外からの出入り口がある事、各住戸が内部で仕切られている事(ドアでも可)です。
各住戸にキッチンやバス・トイレが完備されている事は要件とはなりません。建物区分登記は
構造上での問題が要件となります。あと、一旦B・C・Dでの共有名義で相続し、B・C・Dから
建物区分登記を申請した後、共有物分割によって各住戸を単独所有とする方法も考えられ
ますが、相続における被相続人名義のままでの区分登記の利点は、最初から1戸の不動産
ではなく4戸の不動産であったと考えられる点ですので、共有物分割の余計な費用を払っては
意味がありません。この考え方は、土地を分筆してから相続するのと同様です。(意味が解り
にくいので、詳しくは調査士さんにお尋ねください)
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